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木の茶の間 輪-rin- ふたたび

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走りの行法/修ニ会

3月7日 水曜日

勇湯から長屋に戻ったのが10:30過ぎ、
さらに暖かくして、マウンテンパーカーではなくダウンジャケットに
着替えて、もう一度外に出ます。

自転車に飛び乗り、路地を跡にします。
ぐいぐい漕いでいると、寒くない。
見慣れた風景も深夜だと新鮮。
でも、猫一匹も歩いちゃいない。




東大寺学園幼稚園のあたりで、徒歩の若い女性二人組を追い越す。
彼女達も二月堂に行くのかな…。
坂がきつくなりだんだんスピードが落ちてくる。
‥暑い。
ダウンジャケットにストールをぐるぐる巻きにして、
ママチャリダッシュはいくらなんでも汗ばんできます。

大仏殿の後ろを通り過ぎ、
ここからは坂と階段が混ざる地点まで来ました。
自転車に鍵をかけ、しばしのお別れです。

二月堂、裏参道が思ったより明るい。
土塀に電球が吊るされています。
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ゆっくり歩いていくと、やはり同じように着膨れたシルエットで
二月堂を目指してらっしゃる人がちらほら。
一人で歩いていても心細さはこれっぽっちもありません。

近づくと、焚き火の匂いがしてきます。
参籠所で暖を取るために太い薪を燃やしてらっしゃいました。
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出番をまつお松明の竹。
暖かい色の照明と冴え冴えとした月のあかりに照らされています。

階段を登り、手水で手と口を清め、そこにいらした法被姿(堂司)の方に、
女性用の局の入り口を教えてもらいます。

緊張していました。

まず、夜景を眺めて、正面から参拝してから、
局に入るつもりだったのに、いきなり局に入ってしまいました。
重い古さびた木の扉を押して、靴を脱いで入室するとそこはもう別世界。
暗くて目がなれるまで、しばし呆然。
中には数人の方が座ってらっしゃいました。
この時点で11時少し前。
局は横に幅広い部屋で格子のすぐ前が外陣。
外陣の更に中が内陣となっているようです。(ここらへん後から調べたコトです)
外陣は良く見えますが、内陣となると格子越しだわは遠いわで、
なんだかよくわかりません。

外陣にあった柵を目の前の格子に近づけて何かで括り付けてらっしゃいます。
予習不足で臨んだワタクシは「この通路(外陣のことね)をお坊様が走り回られるのかしらん?
などと思う始末。
括った針金のようなものをふと触ると、節があります。
針金でもヒモでもなく、なにかの蔓のようです。

11時10分位になったら、準備はぴたっと終わり、
沈黙とお香のかおりが漂うだけです。

気がつくと、練行衆の登場です。
ほら貝、鐘、数珠の音、差懸(下駄)の音‥。
パーカッションも音色が豊かで魅入ってしまいます。
そして、声明。
特に一人、低音のものすごく美声の方がいらっしゃって、
魂をゆさぶるような、ハーモニーです。
立ったり座ったりの所作も、少し距離があり、しかも格子越しなので、
全貌が全くわかりません。
それがさらに神秘的な雰囲気をかきたてます。

気がつくと、差懸をかたかたと軽いジョグのような感じで回り始めました。
ああ、これがそうなのね‥とやっと気付く。
「走りの行法」
(局の格子のすぐ外を全力疾走するものと独り決めしていた
 ワタクシってかなりオバカさん。)
そのうち、差懸の音はやみ、足袋はだしの足音が響くなか、
突然、ガンとドンが合わさった音とものすごい瞬間の光がもれてくる。
あ、これが五体投地なのね‥とこれはすぐにわかる。
(光は報道関係カメラマンのフラッシュ)

見えない、五体投地。
音と光がそれを教えてくれる。
眠気はあるのに、神経が冴える不思議な感じ。

見えないからこそ、お香の香り、たいまつの香りが立ち上る。
‥え、たいまつ?
と思うやいなや、メラメラと燃えているたいまつが外陣に入ってきました。
もちろん、二月堂の欄干から差し出されるものよりかなり小型ですが、
火の粉も普通に、木の床に飛び散っています。
あまりのことに、息が止まります。
(堂内でたいまつ‥というのは「だったん」という儀式の時だけかと思っていました)
格子越しとはいえ、目の前で小さいたいまつが燃えさかっているのです。
木造家屋の内部でですよ!

小さいお神輿のようなお厨子が静々と入ってきました。
目の前でいったん、卓のようなものの上に安置されました。
おもわず、ワタクシも両の手を合わせました。
すると、二人ほどの女性が局のなかで、伏して拝みはじめられたのです。

見物ではないのです。
局に入ることを聴聞というそうです。
「近所やし、深夜の秘儀を見にいこう~」というワタクシと
伏して一心不乱に拝んでらっしゃる方と、何と遠いこと。
けれど、手を合わせているだけのワタクシも、
形は違えど少しは心は鎮かに穏やかになっていくのでした。

お厨子の中は小観音(こがんのん)様。
「小観音後入」という儀式でした。

詳しくは↓
ええ古都なら

局の外に出て、外の空気を思いっきり吸い、
改めて、正面から拝みます。
二月堂からの深夜の夜景。
本当に美しく、冴え冴えとしていました。

階段を降り、自転車にまたがり、下界へと一機に下っていきます。
暗いのでスピード感がわかりません。
怖がりですぐにブレーキをぎゅっと握ってしまうワタクシも、
この夜ばかりは全開で、自転車が凄いスピードです。
焼門の交差点の所にある、自動販売機がはっきり見えてきたあたりで、
やっとブレーキをかけはじめました。

長屋に戻っても、興奮さめやらずで、
蒲団に強制的に入ったものの、なかなか寝つけませんでした。
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by kinochanoma | 2007-03-08 01:53 | 平日
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